多くの動物病院では、猫のBUNの正常範囲を16~36 mg/dLとしています。ただし、病院や検査機器によって若干の差異があるため、必ず検査結果に記載されている「基準値」を確認してください。
| BUN数値の段階 | 状態の判定 | 考えられる原因 |
|---|---|---|
| 16~36 mg/dL | 正常範囲 | 腎臓が正常に機能している |
| 36~50 mg/dL | 軽度上昇 | 脱水、食事内容、初期の腎機能低下 |
| 50~70 mg/dL | 中等度上昇 | 慢性腎臓病の進行(IRIS ステージ2~3) |
| 70 mg/dL以上 | 高度上昇 | 進行した慢性腎臓病(IRIS ステージ3~4) |
※症状が気になる場合は必ず獣医師にご相談ください
- クレアチニンの役割と数値解釈|BUNとの大きな違い
- BUNとクレアチニンが同時に高い理由|IRIS ステージ分類について
- 数値が高い猫の家庭での食事管理|ステージ別アプローチ
- 食事管理以外の生活ケア|獣医師監修による総合アプローチ
- よくある質問|飼い主が気になるポイント
- まとめ:BUN・クレアチニン値が高い猫への対応ロードマップ
- 合わせて読みたい関連記事
- 愛猫の血液検査でBUN・クレアチニン値が高いと言われたら|まず理解すべきこと
- BUN(血中尿素窒素)の正体と数値の意味|なぜ上昇するのか
- クレアチニンの役割と数値解釈|BUNとの大きな違い
- BUNとクレアチニンが同時に高い理由|IRIS ステージ分類について
- 数値が高い猫の家庭での食事管理|ステージ別アプローチ
- 食事管理以外の生活ケア|獣医師監修による総合アプローチ
- よくある質問|飼い主が気になるポイント
- まとめ:BUN・クレアチニン値が高い猫への対応ロードマップ
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クレアチニンの役割と数値解釈|BUNとの大きな違い
クレアチニンとは:筋肉代謝の副産物
クレアチニン(Creatinine)は、筋肉のエネルギー代謝時に発生する老廃物です。BUNと異なり、クレアチニンはほぼ腎臓のみで排出される物質であり、脱水状態や食事の影響をほとんど受けません。
このため、クレアチニンは腎臓機能の指標として、BUNよりも信頼度が高いとされています。また、筋肉量が多い猫と少ない猫では、クレアチニン値に若干の個体差が出ることも重要なポイントです。シニア猫や痩せ気味の猫の場合、クレアチニン値が若干高めに出ることがあります。
猫のクレアチニン正常値:0.8~2.1 mg/dL
猫のクレアチニン正常範囲は、一般的に0.8~2.1 mg/dLとされています。これもBUN同様、検査機関によって基準値が異なることがあるため、必ず検査結果を確認してください。
| クレアチニン数値 | 腎機能の目安 | 推奨される対応 |
|---|---|---|
| 0.8~2.1 mg/dL | 正常 | 通常の健康管理を継続 |
| 2.1~3.0 mg/dL | 軽度低下(IRIS ステージ2) | 療法食開始、定期検査 |
| 3.0~5.0 mg/dL | 中等度低下(IRIS ステージ3) | 専門的な食事管理、薬物療法 |
| 5.0 mg/dL以上 | 高度低下(IRIS ステージ4) | 緊急対応、集中的な治療必要 |
BUNとクレアチニンが同時に高い理由|IRIS ステージ分類について
IRIS ステージ分類:腎臓病の重症度を見極める
BUNとクレアチニンが同時に高い場合、多くの場合は慢性腎臓病(CKD)の進行を示しています。国際的には、IRIS(国際獣医腎臓病関心グループ)による分類システムが採用されています。
IRIS ステージ 1:クレアチニン ≤1.6 mg/dL(腎臓ダメージあるが血液検査では異常なし)
IRIS ステージ 2:クレアチニン 1.6~2.8 mg/dL(軽度の腎機能低下)
IRIS ステージ 3:クレアチニン 2.9~5.0 mg/dL(中等度の腎機能低下)
IRIS ステージ 4:クレアチニン >5.0 mg/dL(高度の腎機能低下)
このステージに応じて、食事管理や医薬品の選択が大きく変わるため、正確な診断が非常に重要です。
なぜBUNだけ高くてクレアチニンが正常な場合もあるのか
BUNは以下の条件で上昇しやすいため、必ずしも腎臓病とは限りません。
- 脱水状態:夏場や暖房の効いた部屋での過ごし方による水分不足
- 高タンパク食:特にドライフードの過剰摂取
- 消化管出血:胃潰瘍やその他の出血性疾患
- 肝臓疾患:アンモニア代謝能の低下
クレアチニンはほぼ腎臓のみで排出されるため、クレアチニンが正常な場合は腎機能がまだ十分に機能していると判断できます。ただし、頻繁にBUNが上昇する場合は、脱水改善や食事調整が必要です。
数値が高い猫の家庭での食事管理|ステージ別アプローチ
軽度上昇(BUN 36~50、Cre 2.1~3.0)の食事管理
この段階では、まだ猫が自覚症状を感じていないことが多いです。重要なのは脱水の予防と、タンパク質・リンの適正化です。
具体的な食事管理のポイント:
- ウェットフードの活用:ドライフードだけでなく、ウェットフードを混ぜることで水分摂取量を増やす
- 療法食への切り替え:獣医師の指示で腎臓病用療法食(タンパク質15~20%、リン0.4~0.6%程度)への段階的な切り替え
- 複数の給水ポイント:猫は流れた水を好む傾向があるため、循環式給水器の導入を検討
- 減塩食:塩分が血圧を上げるため、家庭食の場合は特に注意
中等度上昇(BUN 50~70、Cre 3.0~5.0)の食事管理
この段階では、タンパク質とリンの厳密なコントロールが必須になります。同時に、多くの猫で食欲の低下が見られ始める時期でもあります。
推奨される食事管理:
- タンパク質制限食:良質なタンパク質に限定し、量を制限(12~18%)
- リン制限食:リンはクレアチニン上昇を加速させるため、0.3~0.4%以下が目標
- カリウム管理:血液検査でカリウム値も確認し、過剰摂取を防ぐ
- リン吸着薬の併用:獣医師の指示で、食事療法に加えてリン吸着薬を使用することがある
- 嗜好性の維持:療法食を拒否する場合は、温めたり、少量の猫用ふりかけを加えたりして工夫
食欲不振が見られ始める段階ですので、栄養管理は複雑になります。必ず獣医師と栄養管理の詳細を相談してください。
高度上昇(BUN 70以上、Cre 5.0以上)の食事管理
この段階は腎臓病が顕著に進行している状態です。食事管理に加えて、医薬品による治療が必須になります。
- 極度なタンパク質制限:高品質タンパク質10~15%以下
- リン制限:0.3%以下への厳密なコントロール
- カリウム・ナトリウム調整:血液検査結果に基づいた個別対応
- 医薬品の活用:血圧低下薬(ACE阻害薬)、リン吸着薬、造血刺激薬などの併用
- 栄養管理の個別化:強制給餌が必要になる場合もあり、獣医師と綿密に連携する必要がある
この段階では、生活の質(QOL)を維持することが治療の重要な目標になります。延命よりも、猫が快適に過ごすことを優先させる判断も必要になる場合があります。
食事管理以外の生活ケア|獣医師監修による総合アプローチ
水分摂取の最適化:最重要タスク
猫は本来、肉食動物であり、食事から水分を摂取することを前提に進化しました。現代のドライフードを食べている猫は、慢性的な脱水状態に陥りやすく、これが腎臓病を悪化させる大きな要因になっています。
具体的な対策:
- ウェットフード・スープの活用:1日1回は必ずウェットフードを与え、さらにスープを用意
- 循環式給水器:流れた水を飲むことで、1日の水分摂取量を30~50%増やせる可能性
- 複数の給水ボウル設置:リビング、寝室、トイレの近くなど、複数の場所に水を置く
- 温度管理:常温~ぬるめの水を用意(冷たい水は猫が敬遠する傾向)
- 毎日の水の交換:新鮮な水を常時提供
水分摂取量の目安は、体重1kg当たり40~50mLが理想的です。5kgの猫であれば、1日200~250mLの水分を摂取するのが目標になります。
定期検査スケジュール:進行状況の把握
BUNやクレアチニンが高い猫には、定期的な血液検査が不可欠です。
- IRIS ステージ 2:3~6ヶ月ごとに検査
- IRIS ステージ 3:1~3ヶ月ごとに検査
- IRIS ステージ 4:2週間~1ヶ月ごとに検査(初期は特に)
同時に、尿検査、血圧測定、体重測定も実施することで、より正確な病状把握ができます。
ストレス管理と運動:質の高い生活を維持
腎臓病の猫は、ストレスに非常に弱いという特徴があります。
- 環境変化の最小化:家具の配置変更や新しいペットの導入を避ける
- 安全な休息スペース:暖かく、静かな場所(日が当たる窓辺など)を用意
- 軽い運動の継続:無理のない範囲で、短い遊び時間を設ける
- 定期的なスキンシップ:猫が好む程度のブラッシングや撫でる時間
よくある質問|飼い主が気になるポイント
Q1:BUNが高いけどクレアチニンは正常です。これは腎臓病ですか?A:必ずしも腎臓病とは限りません。脱水、高タンパク食、あるいは一時的な体調変化が原因である可能性が高いです。まずは水分摂取を増やし、2~4週間後に再検査を受けることをお勧めします。ただし、頻繁にBUNが上昇する場合は、獣医師と相談してください。
Q2:療法食を拒否します。何か工夫はありますか?A:猫の食欲嗜好は個体差が大きいです。①療法食を温める(香りが強くなる)②異なるメーカーの療法食を試す③ウェットフードに切り替える④獣医師に相談して嗜好性を高めるサプリを併用する、などの工夫があります。強制給餌は大きなストレスになるため、徐々に慣れさせることが重要です。
Q3:高い数値でも症状がありません。本当に治療が必要ですか?A:はい、必要です。猫の腎臓病は「サイレントキラー」と呼ばれ、症状が出た時点でかなり進行していることが多いです。数値が高い段階での食事管理と医薬品投与により、病気の進行を遅らせることができ、その後の生活の質を大きく改善できます。
Q4:栄養不足が心配です。高タンパク質フードを与えてもいいですか?A:いいえ、避けてください。腎臓病の猫では、過剰なタンパク質はBUNやクレアチニン値を上昇させ、病気を加速させます。療法食に含まれるタンパク質は、厳選された高品質なものであり、「量は少ないが質は高い」という原則に従っています。獣医師の指示に従うことが最優先です。
Q5:サプリメント(オメガ-3脂肪酸など)は効果的ですか?A:オメガ-3脂肪酸には、腎臓の炎症を軽減し、血圧を低下させる作用が報告されています。ただし、必ず獣医師に相談した上で使用してください。タンパク質を含むサプリは避け、医学的根拠がある製品を選ぶことが重要です。
まとめ:BUN・クレアチニン値が高い猫への対応ロードマップ
愛猫のBUNやクレアチニン値が高いと言われたときは、以下のステップを踏むことをお勧めします。
ステップ 1:獣医師に詳細な説明を求める
数値だけでなく、IRIS ステージの判定、尿検査結果、血圧測定結果を総合的に確認しましょう。
ステップ 2:家庭での水分管理を最優先
ウェットフードの導入と給水器の工夫で、脱水を防ぎます。
ステップ 3:段階的に療法食へ切り替え
急激な食事変更は猫の食欲を減退させるため、2~3週間かけて徐々に行います。
ステップ 4:定期検査を習慣化
進行状況を把握し、食事管理や医薬品の調整を行います。
ステップ 5:ストレス管理と運動の継続
生活の質を維持することが、長期的な予後の改善につながります。
猫の腎臓病は、完治することはありませんが、適切な管理により、進行速度を大幅に遅らせることは十分に可能です。獣医師と二人三脚で、愛猫の健康寿命を延ばすための取り組みを続けることが最重要です。
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愛猫の血液検査でBUN・クレアチニン値が高いと言われたら|まず理解すべきこと
愛猫の定期健診で血液検査を受けたとき、獣医師から「BUNとクレアチニンの数値が高めですね」と告げられて、心配になった経験はありませんか?特にシニア猫(7歳以上)の場合、こうした数値の上昇は珍しくなく、実際、10歳以上の猫の約30~40%が何らかの腎臓病を患っているとされています。
しかし、数値が高い=即座に危険というわけではありません。大切なのは、その数値が何を示しているのかを正しく理解し、自分の猫の状態に合わせた適切な対策を講じることです。この記事では、BUNとクレアチニンという2つの数値の正確な意味、医学的根拠に基づいた正常値の見方、そして最も重要な食事管理と生活ケアの方法を、段階的に解説していきます。
BUN(血中尿素窒素)の正体と数値の意味|なぜ上昇するのか
BUNとは:タンパク質代謝の終着地点
BUN(Blood Urea Nitrogen、血中尿素窒素)は、タンパク質が体内で利用された後に生じる老廃物です。具体的には、食事から摂取したタンパク質や、体内の古い細胞のタンパク質が分解される際に、肝臓で尿素に変換されます。この尿素が血液中に存在する状態がBUNです。
健康な猫の場合、このBUNは腎臓でろ過され、尿と一緒に体外に排出されます。しかし腎機能が低下すると、尿素が血液中に蓄積されて数値が上昇してしまうのです。
注目すべき点として、BUNは腎臓機能だけでなく、脱水状態や高タンパク食の摂取によっても上昇することがあります。つまり、BUNが高い=必ず腎臓病とは限らないということです。
猫のBUN正常値:16~36 mg/dL が基準
多くの動物病院では、猫のBUNの正常範囲を16~36 mg/dLとしています。ただし、病院や検査機器によって若干の差異があるため、必ず検査結果に記載されている「基準値」を確認してください。
| BUN数値の段階 | 状態の判定 | 考えられる原因 |
|---|---|---|
| 16~36 mg/dL | 正常範囲 | 腎臓が正常に機能している |
| 36~50 mg/dL | 軽度上昇 | 脱水、食事内容、初期の腎機能低下 |
| 50~70 mg/dL | 中等度上昇 | 慢性腎臓病の進行(IRIS ステージ2~3) |
| 70 mg/dL以上 | 高度上昇 | 進行した慢性腎臓病(IRIS ステージ3~4) |
※症状が気になる場合は必ず獣医師にご相談ください
クレアチニンの役割と数値解釈|BUNとの大きな違い
クレアチニンとは:筋肉代謝の副産物
クレアチニン(Creatinine)は、筋肉のエネルギー代謝時に発生する老廃物です。BUNと異なり、クレアチニンはほぼ腎臓のみで排出される物質であり、脱水状態や食事の影響をほとんど受けません。
このため、クレアチニンは腎臓機能の指標として、BUNよりも信頼度が高いとされています。また、筋肉量が多い猫と少ない猫では、クレアチニン値に若干の個体差が出ることも重要なポイントです。シニア猫や痩せ気味の猫の場合、クレアチニン値が若干高めに出ることがあります。
猫のクレアチニン正常値:0.8~2.1 mg/dL
猫のクレアチニン正常範囲は、一般的に0.8~2.1 mg/dLとされています。これもBUN同様、検査機関によって基準値が異なることがあるため、必ず検査結果を確認してください。
| クレアチニン数値 | 腎機能の目安 | 推奨される対応 |
|---|---|---|
| 0.8~2.1 mg/dL | 正常 | 通常の健康管理を継続 |
| 2.1~3.0 mg/dL | 軽度低下(IRIS ステージ2) | 療法食開始、定期検査 |
| 3.0~5.0 mg/dL | 中等度低下(IRIS ステージ3) | 専門的な食事管理、薬物療法 |
| 5.0 mg/dL以上 | 高度低下(IRIS ステージ4) | 緊急対応、集中的な治療必要 |
BUNとクレアチニンが同時に高い理由|IRIS ステージ分類について
IRIS ステージ分類:腎臓病の重症度を見極める
BUNとクレアチニンが同時に高い場合、多くの場合は慢性腎臓病(CKD)の進行を示しています。国際的には、IRIS(国際獣医腎臓病関心グループ)による分類システムが採用されています。
IRIS ステージ 1:クレアチニン ≤1.6 mg/dL(腎臓ダメージあるが血液検査では異常なし)
IRIS ステージ 2:クレアチニン 1.6~2.8 mg/dL(軽度の腎機能低下)
IRIS ステージ 3:クレアチニン 2.9~5.0 mg/dL(中等度の腎機能低下)
IRIS ステージ 4:クレアチニン >5.0 mg/dL(高度の腎機能低下)
このステージに応じて、食事管理や医薬品の選択が大きく変わるため、正確な診断が非常に重要です。
なぜBUNだけ高くてクレアチニンが正常な場合もあるのか
BUNは以下の条件で上昇しやすいため、必ずしも腎臓病とは限りません。
- 脱水状態:夏場や暖房の効いた部屋での過ごし方による水分不足
- 高タンパク食:特にドライフードの過剰摂取
- 消化管出血:胃潰瘍やその他の出血性疾患
- 肝臓疾患:アンモニア代謝能の低下
クレアチニンはほぼ腎臓のみで排出されるため、クレアチニンが正常な場合は腎機能がまだ十分に機能していると判断できます。ただし、頻繁にBUNが上昇する場合は、脱水改善や食事調整が必要です。
数値が高い猫の家庭での食事管理|ステージ別アプローチ
軽度上昇(BUN 36~50、Cre 2.1~3.0)の食事管理
この段階では、まだ猫が自覚症状を感じていないことが多いです。重要なのは脱水の予防と、タンパク質・リンの適正化です。
具体的な食事管理のポイント:
- ウェットフードの活用:ドライフードだけでなく、ウェットフードを混ぜることで水分摂取量を増やす
- 療法食への切り替え:獣医師の指示で腎臓病用療法食(タンパク質15~20%、リン0.4~0.6%程度)への段階的な切り替え
- 複数の給水ポイント:猫は流れた水を好む傾向があるため、循環式給水器の導入を検討
- 減塩食:塩分が血圧を上げるため、家庭食の場合は特に注意
中等度上昇(BUN 50~70、Cre 3.0~5.0)の食事管理
この段階では、タンパク質とリンの厳密なコントロールが必須になります。同時に、多くの猫で食欲の低下が見られ始める時期でもあります。
推奨される食事管理:
- タンパク質制限食:良質なタンパク質に限定し、量を制限(12~18%)
- リン制限食:リンはクレアチニン上昇を加速させるため、0.3~0.4%以下が目標
- カリウム管理:血液検査でカリウム値も確認し、過剰摂取を防ぐ
- リン吸着薬の併用:獣医師の指示で、食事療法に加えてリン吸着薬を使用することがある
- 嗜好性の維持:療法食を拒否する場合は、温めたり、少量の猫用ふりかけを加えたりして工夫
食欲不振が見られ始める段階ですので、栄養管理は複雑になります。必ず獣医師と栄養管理の詳細を相談してください。
高度上昇(BUN 70以上、Cre 5.0以上)の食事管理
この段階は腎臓病が顕著に進行している状態です。食事管理に加えて、医薬品による治療が必須になります。
- 極度なタンパク質制限:高品質タンパク質10~15%以下
- リン制限:0.3%以下への厳密なコントロール
- カリウム・ナトリウム調整:血液検査結果に基づいた個別対応
- 医薬品の活用:血圧低下薬(ACE阻害薬)、リン吸着薬、造血刺激薬などの併用
- 栄養管理の個別化:強制給餌が必要になる場合もあり、獣医師と綿密に連携する必要がある
この段階では、生活の質(QOL)を維持することが治療の重要な目標になります。延命よりも、猫が快適に過ごすことを優先させる判断も必要になる場合があります。
食事管理以外の生活ケア|獣医師監修による総合アプローチ
水分摂取の最適化:最重要タスク
猫は本来、肉食動物であり、食事から水分を摂取することを前提に進化しました。現代のドライフードを食べている猫は、慢性的な脱水状態に陥りやすく、これが腎臓病を悪化させる大きな要因になっています。
具体的な対策:
- ウェットフード・スープの活用:1日1回は必ずウェットフードを与え、さらにスープを用意
- 循環式給水器:流れた水を飲むことで、1日の水分摂取量を30~50%増やせる可能性
- 複数の給水ボウル設置:リビング、寝室、トイレの近くなど、複数の場所に水を置く
- 温度管理:常温~ぬるめの水を用意(冷たい水は猫が敬遠する傾向)
- 毎日の水の交換:新鮮な水を常時提供
水分摂取量の目安は、体重1kg当たり40~50mLが理想的です。5kgの猫であれば、1日200~250mLの水分を摂取するのが目標になります。
定期検査スケジュール:進行状況の把握
BUNやクレアチニンが高い猫には、定期的な血液検査が不可欠です。
- IRIS ステージ 2:3~6ヶ月ごとに検査
- IRIS ステージ 3:1~3ヶ月ごとに検査
- IRIS ステージ 4:2週間~1ヶ月ごとに検査(初期は特に)
同時に、尿検査、血圧測定、体重測定も実施することで、より正確な病状把握ができます。
ストレス管理と運動:質の高い生活を維持
腎臓病の猫は、ストレスに非常に弱いという特徴があります。
- 環境変化の最小化:家具の配置変更や新しいペットの導入を避ける
- 安全な休息スペース:暖かく、静かな場所(日が当たる窓辺など)を用意
- 軽い運動の継続:無理のない範囲で、短い遊び時間を設ける
- 定期的なスキンシップ:猫が好む程度のブラッシングや撫でる時間
よくある質問|飼い主が気になるポイント
Q1:BUNが高いけどクレアチニンは正常です。これは腎臓病ですか?A:必ずしも腎臓病とは限りません。脱水、高タンパク食、あるいは一時的な体調変化が原因である可能性が高いです。まずは水分摂取を増やし、2~4週間後に再検査を受けることをお勧めします。ただし、頻繁にBUNが上昇する場合は、獣医師と相談してください。
Q2:療法食を拒否します。何か工夫はありますか?A:猫の食欲嗜好は個体差が大きいです。①療法食を温める(香りが強くなる)②異なるメーカーの療法食を試す③ウェットフードに切り替える④獣医師に相談して嗜好性を高めるサプリを併用する、などの工夫があります。強制給餌は大きなストレスになるため、徐々に慣れさせることが重要です。
Q3:高い数値でも症状がありません。本当に治療が必要ですか?A:はい、必要です。猫の腎臓病は「サイレントキラー」と呼ばれ、症状が出た時点でかなり進行していることが多いです。数値が高い段階での食事管理と医薬品投与により、病気の進行を遅らせることができ、その後の生活の質を大きく改善できます。
Q4:栄養不足が心配です。高タンパク質フードを与えてもいいですか?A:いいえ、避けてください。腎臓病の猫では、過剰なタンパク質はBUNやクレアチニン値を上昇させ、病気を加速させます。療法食に含まれるタンパク質は、厳選された高品質なものであり、「量は少ないが質は高い」という原則に従っています。獣医師の指示に従うことが最優先です。
Q5:サプリメント(オメガ-3脂肪酸など)は効果的ですか?A:オメガ-3脂肪酸には、腎臓の炎症を軽減し、血圧を低下させる作用が報告されています。ただし、必ず獣医師に相談した上で使用してください。タンパク質を含むサプリは避け、医学的根拠がある製品を選ぶことが重要です。
まとめ:BUN・クレアチニン値が高い猫への対応ロードマップ
愛猫のBUNやクレアチニン値が高いと言われたときは、以下のステップを踏むことをお勧めします。
ステップ 1:獣医師に詳細な説明を求める
数値だけでなく、IRIS ステージの判定、尿検査結果、血圧測定結果を総合的に確認しましょう。
ステップ 2:家庭での水分管理を最優先
ウェットフードの導入と給水器の工夫で、脱水を防ぎます。
ステップ 3:段階的に療法食へ切り替え
急激な食事変更は猫の食欲を減退させるため、2~3週間かけて徐々に行います。
ステップ 4:定期検査を習慣化
進行状況を把握し、食事管理や医薬品の調整を行います。
ステップ 5:ストレス管理と運動の継続
生活の質を維持することが、長期的な予後の改善につながります。
猫の腎臓病は、完治することはありませんが、適切な管理により、進行速度を大幅に遅らせることは十分に可能です。獣医師と二人三脚で、愛猫の健康寿命を延ばすための取り組みを続けることが最重要です。
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